はな劇場

地下1階。土壁に囲まれた、アップライトピアノとステージだけの場末パブ。Googleマップには載っていません。

民謡「さくらさくら」及び、武満徹「Sakura」に関する散文

先日、ツイッターでつながっている方から、開花した桜の画像を送っていただいた。

その日、私が住む町ではまだ雪がちらついていて、ぼたん雪が空中に漂っている景色が、桜の散る姿に見えなくもなかった。

 

民謡「さくらさくら」

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桜の季節になると聞きたくなる曲や歌はたくさんあるが、ほとんどの日本人が知っている曲というと、この民謡「さくらさくら」ではないか。この歌を知らない日本人を探す方が難しいと思う。

 

作曲者不明のこの曲は、江戸時代幕末に作られたとされている。もともとは箏(こと)の練習曲だったらしい。

私の祖母は箏の師匠をしていたため、家には13弦の箏が置いてあった。さくらさくらの楽譜もあったので、私も箏で試しに弾いてみた。ほとんどの部分、隣合う弦をはじけばいいだけだったので、とても簡単だと感じたのを覚えている。(箏は複数の調律の仕方があり、正しい調子にしておく必要があるが)

だから、「さくらさくら」が元は箏の練習曲だったということを知って、変に納得した。

 

武満徹「Sakura」


Tōru Takemitsu - "Sakura"

武満徹氏(1930-1996)による編曲「さくら」は、混声合唱のための「うた ll」に収録されている。学生のころ、この編曲をうたったことがあるが、彼の編曲には、日本人が「さくら」に対して抱いている印象がそのまま映し出されているように感じた。

美しさと静かな狂気の存在と、そして、桜吹雪の情景が目に浮かぶような鮮やかな写実性も持っている。

 

武満徹氏が作曲したその他の現代曲の楽譜をちらっと見たことがあるが、とても難解すぎて、私のような素人にはいったいどんな曲に仕上がるのかまったくイメージできず、すぐにパタンと楽譜本を閉じた記憶がある。でも、彼の書いた合唱曲は別だ。

混声合唱のための「うた ll」に含まれている合唱曲は、どれもすべて人間味にあふれ、日本人らしい情緒が豊かに描かれている。「歌い手を酔わせる」曲だ―――

 

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桜の季節、毎年聞きたい曲はたくさんあるけれど、武満の「さくら」は通奏低音のように常に後頭部に響いている。