はな劇場

地下1階。土壁に囲まれた、アップライトピアノとステージだけの場末パブ。Googleマップには載っていません。

私は何者でどこからやってきて何処へ行くのか

このページを開いてくださってありがとうございます。私はどんな人間なのか、そこに興味を持ってくださったことに、とてもうれしく感じています。

 

私は何者で、どういう人間なのかーーー、人の細胞は常に生まれ変わっているといいますので、どこからどこまでが「私」というのは難しいですが、昔のことを思い出しながら、ひとり言のようにぽつぽつと書いてみようと思いました。

 

クチナシと私

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空想に夢中になる子供だった。庭には、祖父がていねいに育てていたクチナシの花があり、むせかえるようなニオイを放っていた。私はその匂いが大嫌いで、いつもクチナシの近くに行くときは息を止めなくてはならなかった。

ヒステリー気味な母とギャンブル好きな父を持ち、小学校2年生のときに両親が不仲だということを確信した。幻をよく見るようになり、悪夢が怖くて夜眠れない子供になった。

頭が痛くなるようなクチナシの香りと、幻覚と悪夢の詰まった一軒家から逃げ出したいと、いつもそう願っていた。

 

オンガクと私

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家にはアップライトの黒いピアノがあり、母のシュミでピアノ教室に通わされていた。私は練習を一切しない最低品質級の生徒で、講師の女性を何度も泣かしたことがある。

ある早朝、目覚めると、両親が段ボール箱に荷造りをしていた。「ちょっと遠くに行くから早く支度をしなさい」といわれ、目をこすりながら服を着た。

たくさんの荷物がトラックに積まれる中、だれもピアノを運ぶ気配がないのに気が付いて、母に聞いた。「私のピアノは持っていかないの?」「ピアノは置いていくのよ」

私は自分がピアノを弾くのが好きだったことを思い出して、「最後にちょっとだけ弾いてもいい?」と聞いた。母は「こんな早朝に、近所迷惑になるからやめなさい」といった。

黒く閉ざされたままのアップライトピアノとクチナシの強烈な香りをあとに残し、私たち一家は、その朝、その町から消えた。

 

ブンガクと私

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好きな本は何回でも読むくせがある。小学校の図書室で好きだったのは、日本書紀や古事記に出てくる日本神話の本と、ビクトルユーゴ―の「レ・ミゼラブル」だった。家には祖父が買ってくれた子ども百科事典があり、その中では「地震の起こる仕組み」と「世界の人種」のページがお気に入りだった。

11歳のときに地方から関西へと引っ越した私は、自分のアクセントにコンプレックスを持っていた。

中学2年生のときの国語の先生に、それを見透かされていて、「無理にアクセントを関西弁にする必要はない、将来朗読の仕事をすることにでもなれば、標準的なイントネーションの方が有利なんだから」といわれて、関西弁のサル真似を止めた。朗読の仕事なんてやるわけない、と心のどこかでは思っていたけれど。

 

バブルと私

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私が学生を終えて社会に出たとき、すでに日本のバブル経済は崩壊して木っ端みじんだった。日本の某有名英会話スクールで事務職員として就職したものの、肌に合わず3か月で退職した。

日本では働けない体質かもしれない、とウスウス感じていた私は海外に目を向け、9年半続いた香港生活は私の人生におけるバブル経済絶頂期だった。酒と旅に浪費した。キューバでは100万使ったし、オマーン&ドバイでは60万円費やした。

でも、私は11歳のときに経験したことを忘れない。お金が無くなれば大人は離れていく。それまで「社長の娘」としてちやほやしていた大人たちが、手のひらを返したようにそっけなく豹変したことを。

「女の一生は男で決まる」―――海外に居ながらにしていつまでも昭和から抜け出せないセンパイ女性たちを後に、私の香港バブルは終わった。

 

男と私

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「Qu'est-ce que tu veux manger ce soir?(今夜、何食べたい?)」と、不用意に彼がフランス語で言った。私は死神の大ガマでざっくり切られたような衝撃を受け、自分が透明人間になったように感じた。

私は彼に向って、決してフランス語で話しかけない。彼がフランス語で私に何かを語り掛けるのも気に入らない。

彼はイギリス人だが、私と出会う前は、ここ、カナダのモントリオールでケベック女性と16年間同棲していた。だから、彼が私に向かってフランス語で話しかけることは、元妻の名前と呼び間違えるくらい、私にはショックなことだ。

―――私は見えない血をダラダラと流しながら、とぼけて言った。「何? 今、何て言ったの?」
心の中ではこう聞きたかった。(誰に向かってしゃべってるの?)

彼は慌てて、「ごめんごめん、今夜、何食べたい?」と英語で言い直した。

だから、今はフランス語を話さない、使わない。フランス語で質問されたら英語で答える。私は心の狭い女だから。でも、いつかは、自然にフランス語で会話できるといいなと、本当はそう思っている。

 

死と私

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私は死ぬのが怖い。

庭でコンポスト(有機たい肥)を作っている。二週間前に土に埋めたバナナの皮がボロボロに崩れて有機土になりかけているのを見ると、「自分もいつかはこうなる」と思う。

インドネシアの離島でシュノーケリングをして海面にぷかぷか浮かんでいると、ちょうどいいあんばいの塩水に浸った自分の死体を連想し、息苦しくなる。

森の中で腐ってしまった木が轟音を立てて倒れるの聞くとき、自分は誰にも知られずひっそりと死ぬのかもしれない、と考える。

「友達を作りなさい」と、友人の一人が言った。子供がいない私は、おそらくパートナーが先立った後一人で死を迎えることになるだろうという話をしたときのこと。

アマゾンの奥地に住むある民族は、死に対する恐怖を感じないらしい。私たちは余計なものを知り過ぎてしまったために、死の恐怖をわざわざ増幅しているのだろう。

 

コトバと私

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外国語の会話を学ぶようになって、外国語なら自分のことを素直に話せる自分に気が付いた。それで、英会話を学ぶのに夢中になった。スクールのネイティブ講師は、私のセラピストになりカウンセラーになった。

英語、北京語、広東語、フランス語、スペイン語、ロシア語、ポルトガル語、スワヒリ語、インドネシア語…、コトバはおもしろい。世の中には、人と言葉とストーリーがあふれている。だれもが、それぞれの言葉と隠された物語を内に秘めている。他の誰かに発掘されるときを待っているかのように。

私のパートナーは、フツーの人の中の物語を発見するのが得意だ。彼は、だれにでも屈託なく話しかけ、ネタを掘り出して楽しんでいる。白い人も、黒い人も、ジャガイモの皮の色の人も、金持ちも貧乏も、内臓を開いてみればだいたいみな同じでしょ、と私に言った。

食パンのミミのように、こんがりと日焼けした肌色の私の内側には、余計なものが詰まっている。

 

 

…でも、私の話は、もう十分ココに吐き出したかな。自分の中に散らばっていたものを集めて、ここに書き出してみた。ちょっとスッキリしたので、そろそろバトンタッチしようと思う。


―――それで、あなたのストーリーは何ですか?

 

 

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